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Venner for livet 友だちを守って

ノルウェー映画 (2005)

マグヌス・ソールハグ(Magnus Solhaug)が主役を演じる「少年と犬」の子供向き映画。子供向きだからか、あるいは、ノルウェーの映画製作水準が低いのか、脚本の出来はひどく、人物設定も不自然だ。唯一の救いと言えば、2015年以来ヨーロッパの最大関心事となっている移民問題を、ど田舎における「人種差別」という形で先取りしていること(映画の製作年は2005年)。一方、観ていて腹立たしかったのが、母の存在。幼い娘を溺愛し、サッカー好きの12-13歳の息子に対しては徹底的に冷たい。もちろん、映画の中では、あり得ないような「悪い母」が、時として登場する。中でも最悪は、『Vipère au poing(毒蛇を握りしめて)』の毒蛇のような母。以前紹介した『Mon fils à moi(息子は私のもの)』よりも遥かに悪辣で、あるのは息子に対する憎悪のみ。しかし、この映画の母はそんな非現実の存在ではなく、ごく普通の家庭の母なのだ。その母が、田舎で農業がやりたいといって、息子の北欧ジュニア・サッカー選手権への出場を許さず、しかも、事前に一言の相談もなく、勝手に田舎に連れていくだろうか? そんなことはあり得ない。だから、映画の前提そのものが破綻している。実際に田舎に言ってからも、脚本の不自然さは目立つ。最後になって最高に腹が立ったのが、日本車が登場し、「車がポンコツだったので、これ以上早く走れなくて」と父親に言わせている。2005年と言えば、ヨーロッパでも日本車の評価が十分高かった時だ。「人種差別」をテーマにしている映画で、堂々とメーカー名を見せて「ポンコツ」と言わしめるやり方には、嫌悪感を覚える。

都会の小学校に通うペテ(英語風に言うならピーター)は、サッカーが得意。ペテの活躍で勝った試合の後、応援に来ていた父から、夏休みには、田舎で農園を借りて過ごすと宣告される。母が農業学校に行って資格を取り、実地に農業をやってみたくて仕方がないことからだ。それなら一人でやればいい。それを、一家がまとまっていることが大事という理屈をつけて、ペテを、デンマークでの国際試合に行かせない。代りに、田舎に連れて行かれる。携帯も通じないような、ど田舎だ。ところが、父は、インターネットがないと困ると言い訳して、着いた明くる日にはさっさと家に戻ってしまう。実にひどい父と母だ。ペテは、農園の近くで、虐められている犬が逃げ出した現場に居合わせ、犬をかくまってやる。同時に、カシミールからやってきた移民の妹とも出会う。映画は、この犬と妹、村のガソリンスタンドとガレージを経営する2人の人種差別的な男、ペテの家の車の盗難の3つが絡み合って進行する。なお、DVDに入っているノルウェー語字幕と英語字幕がかなり違っていることが判明したため、あらすじの台詞はノルウェー語字幕に従うことにした。このDVD、正規版にも係わらず出来が悪く、画像のサイズも場面によってズレがあり、画質も非常に悪い(Adobe BridgeのCamera Rawで、ディコールに強い「ノイズ軽減」をかけている)。PAL方式なので画素数は低くないはずなので、ビットレートが非常に低いせいであろう。

マグヌス・ソールハグは、プラチナブロンドの髪の典型的なノルウェーの少年だが、取り立ててハンサムでも可愛くもない。犬に顔を舐められたり、大きな雄牛に乗ったり、岩登りをしたり大変な役ではあるが。


あらすじ

ノルウェー南部のどこかの町。後で、父親がラルヴィク(Larvik)行きの電車に乗るので、その町かも知れない。もしラルヴィクだとすれば、オスロの南西130キロにある海岸沿いの町で、そこからデンマークのユトランド半島へ行くフェリーが出ている。かつて、私も乗ったことのあるフェリーだ。ペテは、ジュニア・サッカー・チーム「シェイド(Skeid)」の主力メンバーで、残り5分で「先制ゴールで勝つぞ。全力でいけ」と投入され、見事にゴールを決めてチームを勝利に導く。みんなに祝福を受けるペテ(1枚目の写真)。応援に来てくれた父母と妹と一緒に帰宅する。ペテだけが自転車に乗っている。自転車で寄って来ては、「僕のゴール見た?」「左右のフェイント見た?」と嬉しさ一杯だ。父が、真面目な顔になって、「自転車を降りないか? 話がある」と言い出す。「母さんは冬に農業学校に行き、資格を取ったんだ。今年の夏、農園主がアメリカに行ってる間、世話をすることになった」。「すごいや」。「そう思うか? だけど、ダナ・カップに出られなくなるんだぞ」。ダナ・カップとは、デンマーク国際ユースサッカーのこと。「どうして?」。「土地に馴染めるか確かめたい。だから、私たちは… そこで夏中過ごすんだ」(2枚目の写真)。「だけど、デンマークまで 数週間しかないよ!」(3枚目の写真)。ここで母が口を出す。「もし農場の持ち主がアメリカに移住すれば、そこを買い取れるの」。「ひどいや! 農夫になんか なるもんか!」。こんな犠牲を、自分の趣味のために息子に強いる。それも、予告なしで突然に。ひどい母だ。それに同調する父も情けない。
  
  
  

結局、一家で、農場のある田舎へと向かう。ノルウェー南部なので、フィヨルド地帯と違い、なだらかな丘陵が広がっている。美しい自然の中をひた走る車(1枚目の写真)。ガソリンスタンドと店が数軒あるだけの村を通り過ぎると、農園への脇道に入る。すると、携帯を見ていたペテが急に叫ぶ。「そんな! ひどすぎる!」(2枚目の写真)。「何が?」。「携帯が圏外だよ!」。これでは、残してきた友達との「連絡を保とう」という約束も果たせなくなってしまう。それに対する母の言葉は、「叫ぶんじゃないの」。自分が携帯を使わないからといって、何と冷淡な言い方だろう。
  
  

罰が当たったのか、いきなり目の前に大きな雄牛が現れる。道路を占領していて通れない。クラクションを鳴らしても動こうとしない。「それじゃ雄牛は動かない。追う払わないと」と言う母。「私が?」と訊く父。当然とばかりに頷く母。これも納得できない。農業学校に通って資格を取ったくらいなら、自分で率先してやるべきなのに、意見だけ物申して、自分は何もしないなんて最低だ。仕方なく車から降りた父親が、「動け」と手で指図しても、逆に唸って向かってくる。父は慌てて逃げ帰る。その時、雄牛の先に座っている東洋系の少女の存在に気付く。「やあ。それ、君の雄牛か?」と父。首を振る少女。「動かせるかい?」と訊くと、「場合によるわ」との返事。「場合って?」。「100クローネくれたら」(2005年の時点で1700円)。父:「100クローネだって?」。母:「渡しなさいよ、先に行ける」。父:「牛をどかせてくれ。そしたら払う」。少女:「お金が先よ」。「分かった。来てくれ」「じゃあ、牛をどかしてくれ」とお金を渡す。少女が雄牛の耳に囁くと、雄牛は従順に従った(写真)。この少女、背が高くて年上に見えてしまうが、資料によれば、生まれた年はペテ役のマグヌスと同じなのだ。
  

障害物がなくなったので、農園まではすぐに着く。農園が見えて、「素敵ね」と一人満足げな母。ペテはしらけている。車が着くと、農園主の老夫婦が出迎える。3人は車から降りて挨拶するが、ペテは最後に降りて挨拶もせず離れて見ている(1枚目の写真)。周囲が砂利ばかりなので、持って来たスケボーも使えない(2枚目の写真)。母の方は、「まさに 夢に見た場所ね」と、はしゃいでいる。ペテは、携帯の電波が入らないか、あちこち動き回るが全然ダメ。これには父も困った様子だ。農園主に「ここじゃ、携帯は圏外?」と訊く。「山の向こうまでいけば、圏内だよ」と笑いながら応える農園主。それを聞いて笑う母。いったいこの人物は、自分さえ良ければそれでいいのだろうか? 父はさらに、「インターネット接続は?」と尋ねる。「当分、無理だろうね」。「何か他にないかな。仕事に必要なんだ。大量のファイルを送らないといけない」。「アナログだな」。
  
  

農園主の老夫婦がアメリカに向けて旅立ち、一家4人だけになる。さっそく、母が、父に向かって「ペテと村まで行って、食料品を買ってきて」と要求。父が何か言いかけると「GSが開いてた」と追い討ちをかける。自分の意思に従わせることしか考えない女性だ。村のGSの売店に入った2人。品物を選んでいると、店主の怒鳴り声がする。「出てけ!」。東洋系のハイティーンの男が「俺は 買物に…」と言いかけると、「売るものなどない。出ろ!」。「客だぞ」。「失せろ!」。唖然として見ている2人(写真)。男が出て行くと、店主は2人に「悪かったな。だが、奴らカラスみたいに盗むんだ」と説明する。「で、奴が最悪のワル。すべての難民が同じだとは言わんが、奴らが村に来てから多くの車が盗まれた。ウチは3回盗みに入られ、タバコ数千クローネがやられた」と追加で説明する。一緒にいた別の女性客が、「彼らが来る前から 盗難はあったわ」と擁護しても、「今ほどひどくない。奴らのせいだって誰でも知ってる」と問答無用だ。こういうのが、典型的な人種差別主義者だ。そこに、村に駐在する警官がやってくる。小さなコミュニティなので、こんなひどい店主にも、友達のように話しかける。店を出ると、父がペテに「あの男、少し変じゃないか?」と話しかける。ペテは「少し?」と返す。子供心にも、あのような言い方は反発を招いたのだろう。農園に戻った2人。夕食の時間になって、父が、「牛乳の味が変だな?」と言い出す。「前飲んでたのと同じ銘柄よ」と母。「羊小屋に行った時の臭いが、鼻に残ってるんだろう」「屋外便所じゃないだけマシだな」と父。ペテは、「味が変だよ」と言って、牛乳だけでなく、食事のすべてを残し2階の寝室に上がって行く。母:「何か やったら?」。ペテ:「やるって、何を?」「森の中でスケボーやれって?」。精一杯の抵抗か?
  

ペテは、翌朝早く起きて、山に登る。何としても携帯を通じさせた一心だ。途中の景色は美しい(1枚目の写真)。家を見おろせる高台に到達して試してみるが、圏外のまま。ため息をついて、一番高い山のてっぺんを目指す。山頂に着くと、着信音が聞こえる。さっそく携帯を取り出すと圏内になっている。「やった」と満足げなペテ(2枚目の写真)。町に残してきた友達から「第1戦勝利。次だ。クリス」とのメールを見て、山頂からの写真を撮り、「よくやった。今、ここにいる」と返事を送る。それにしても、毎日ここまで登ってくるのは、大変な労力だ。
  
  

ペテは、山を降りきった所で犬の鳴き声を耳にする。どうやら、棒で叩かれているようだ。森の中からこっそり様子を伺う。やがて、犬が逃げてくる。「戻って来い、レオ!」「殺してやる。待ってろ」という飼い主の怒鳴り声を後にして、犬を追いかけるペテ。湖のほとりで犬の革紐が潅木に絡まって動けなくなっているのを見つける。ペテは、「心配しないで。レオって名だろ? 安心して。僕は何もしない」と犬に近付き、「僕はペテだ。よろしくな」と優しく声を掛ける。そして、後ろ脚を怪我しているのが分かると、「可哀想に」と言い(写真)、水で拭いてやり、シャツの裾を裂いて脚を縛ってやる。そして、革紐を首から外して去ろうとすると、犬も一緒についてくる
  

ペテが家に戻ると、父が荷物を持って車に乗ろうとしている。ペテ:「何するの?」。母:「父さんは電車に乗るの」「ひどい格好ね」。「出かけるの?」。「そう、お仕事で」。「そんな?!」。一家4人で農園暮らしを体験するのが目的で、サッカーもあきらめたのに、それを言い出した本人が逃げ出そうとしている。ペテが怒るのは当然だろう。父に、「仕事で行くの?」と問い詰める。「悪いが…」と口をにごす父。「ここで仕事しないの?」。「一晩中試したんだが、うまくいかない。緊急なんだ。分かるな」。分かるはずがない。ペテは「嘘ついた」と非難する。「悪いと思ってる」。「僕はデンマークに行けなかったのに、父さんは好きな時に帰っちゃう」(1枚目の写真)。母は、苛立たしげに、「車に乗って」と命じるだけ。「できない。レオの世話をしないと」。レオを見せて、「森で見つけたんだ。虐められてた」と説明すると、母は「ウソおっしゃい」。心底腹の立つ女だ。「ホントだよ」。「犬を乗せなさい。警察に渡して 返してもらわないと」。そして、4人と犬を乗せて村に向かう。車がGSの前を差し掛かると、さっき犬を虐めていた男が、警官と楽しく話している。犬を警察に渡したら、すぐ男に戻されるのは明らかだ。そのまま駅に着く。ペテは車を降りて見送りには行かない。睨むようにホームの3人を見ている(2枚目の写真)。頭の中は、これからどうすべきかで一杯だ。
  
  

母が戻り、「じゃあ、犬を返しに行くわよ」と言う。「先に 何か飲むもの買える?」とペテ。「GSに寄るわ」。「電池も買わないと」。「GSで売ってるでしょ」。「店の方が安いよ」。「父親似なのね。いいわ、そうしましょう」。母と妹が店に入って行く。その時、昨日雄牛をどけてくれた少女が自転車で通りかかる。ペテは、「ねえ、待って!」と呼び止め、「この犬、昨日会ったトコまで連れてってくれる?」と訊く(1枚目の写真)。「あんたの犬じゃない。GSのロゲの犬よ」。「虐めてたんだ」。「驚かないわ」。「母さんが警察に渡したら、ロゲに戻されちゃう」。「そうね。2人は友だちだから」。「だから、やってくれる?」。「何をくれるの?」。昨日の雄牛と同じパターンだ。「何?」と驚くペテを見て、「忘れて」と去っていく少女。ペテは仕方なく、「100クローネで」と申し出る。「約束する?」。「するよ」。レオは少女に連れていかれ、ペテの不安は解消された。ペテが携帯を見ていると、昨日GSの売店で追い払われた男が寄って来て、「そんな携帯欲しかったんだ。見ていいか?」と訊く。素直に渡すペテ。すると、犬を虐待していたロゲが、「やめろ」と叫んでつかつかと寄ってくる。男:「見てるだけだ」。ロゲは、携帯を取り上げ、男を泥棒のように扱う。そこに警官が「何してる?」と近付いてくる。ロゲ:「子供から携帯を盗ろうとした」。男:「嘘だ」。ロゲ:「こいつは、絶対、最近起きてる盗難の主犯だ」(2枚目の写真)。そして、ポケットにあったタバコを取り上げ、「これは何だ? どこで手に入れた?」といちゃもんをつける。警官は、「もう 行った方がいい」と言うだけ。男は「タバコを返せ」というが、ロゲはわざと返さない。「ろくでなし。人種差別だ」と言って去っていく男。去った後も、ロゲは警官に「あんな奴、のさばらせとくのか? シャンは不良だ」と続ける。警官も「児童福祉局に言ってあるから、何とかするだろう」と答える。結託しているとしか見えない。警官が去り、ロゲは、「金に気をつけろ。奴らが借りるってのは、盗むってこった」と言ってペテに携帯を返す。昨日のGSの店の主人と同じ発想の持ち主だ。母が戻ってきて、「犬は、どこ?」と訊く。「逃げたよ。車の中 暑かったから、ドアを開けっ放しにしちゃった」。「警察には 言っておかないと」。「飼い主の家に帰ったよ」。
  
  

3人で帰宅する途中、昨日雄牛に会った場所まで来ると、ペテは「ここで とまってよ」と頼む。「ここから 歩いて帰るから」。そして、少女と犬と再会する。犬を引き取る間もなくトラクターが通りかかる。ペテを見た農夫が「ここで 何しとる?」と訊く。「この上に住んでる」。「リアブリュケか?」。「そう」。「なら、わしの雄牛に悪さはしとらんだろう。昨日 来たんだよな」。「うん」。「雄牛が どうかしたの?」。「ある日いなくなったかと思うと、突然 また現れるんだ」。これは、例の少女が雄牛を乗り回しているからだ。「誰か 見んかったか?」。「ううん」。「見たら、教えてくれよな」。農夫が去ると、隠れていた少女が姿を見せる。開口一番、「お金」。「君のこと 黙っててあげたじゃない」。「約束でしょ。100クローネ」。お金を渡してレオを返してもらう(1枚目の写真)。ペテ:「あの おじさん、怖くないの?」。少女:「ううん。でも、あんたは危ないわね」。「どうして?」。「面と向かって嘘ついた」。「告げ口は嫌いだ」。「それは、あんたの問題でしょ」。少女が打ち解けないのは、人種偏見に苦しめられているからであろう。ペテは納屋にレオを隠す。翌朝、うっかり寝坊してしまう。外へ出ると、母からは「寝ぼすけ君ね」と言われ、納屋の扉が開いている。心配になって納屋を覗くと、レオはダンボールの影に隠れていた。ペテは、遠出の用意をして、こっそりレオを連れ出す。昨日会った湖まで行くと、服を着たまま中に平気で入って行く。犬とじゃれ合うペテ。そこに雄牛に乗った少女が現れる。ペテは「やあ」と声をかける。返事がない。「『やあ』って言ったよ」。それでも返事がない。「『やあ』って言ってもらうにも お金が?」と皮肉って訊く。「『やあ』は幾らなの?」。あきれたような少女の顔を見て、話題を変える。「ホントに雄牛と話せるの?」。「ええ」。「どこで習ったの?」。「カシミール」。「それ、どこ?」。「興味ないくせに」。遂に堪忍袋の緒が切れたペテ。「何だよそれ? 僕が何したっての?」と責める。少女:「アドバイス欲しい?」。ペテ:「それって幾ら?」。「ロゲが犬を探してる。今の隠し場所、良くないわよ」(2枚目の写真)。そのまま去って行く少女。
  
  

ペテは森の中に、枝で小屋のようなものを造り、「今夜はここにいるんだ。いいな?」と言って(1枚目の写真)、家に帰る。少女の忠告を聞いたのだ。ところが、ペテが寝ていると、レオのクンクンいう音が聞こえる。仕方なく、自分の部屋に入れてやる。ところが、深夜、突然にレオが窓に向かって吠え始める。吠える音を聞いて駆けつけた母が、「どうして、ここに犬がいるの?」と問い詰める。しかし、問題はそれどころではない。誰かが、電話線を切断し、車を盗んでいったのだ。「誰か外にいるよ、ママ」「ウチの車だ。盗んでくよ」(2枚目の写真)。外に出て行った2人。ペテ:「電話線が切られてる」。母:「何て 泥棒なの」「犬は、明日ちゃんと返すのよ。納屋に入れて」「嘘ついたわね」。「でも、ママ…」。「口答えしない」。ペテは、「明日の朝、連れ出すからな」と言って、レオを納屋に入れてやる。厳重に鍵をかける母。「ママ、聞いてよ」と言っても、「寝なさい」。
  
  

翌朝、ペテが起きると、母はトラクターで警察へ出かけて、いない。ペテは、母が帰る前にレオを逃がそうと、納屋の裏の板を剥がして救い出す。ちょうど、母のトラクターがパトカーと一緒に着いたので、危機一髪だ。ペテは警官が外にいるので逃げられず、草むらにレオと一緒に隠れて話を聞いている(1枚目の写真)。ペテがいないことを知った母が、警官に、「犬を連れて家出した」と話している。「ロゲはこっちに向かってますが、来たら そう話せばいい」「多分、同じ窃盗グループの仕業でしょう。ローカルなものなのか、そうでないのかも分かっていません」。その時、ロゲが車で乗りつける。母:「無駄足を踏ませて悪いわね。息子が、犬と一緒に家出したの」。「いつ?」。「さあ、ついさっき」。「途中では見なかったから、森の中かも。きっと、まだ近くだ」「歩いて 捜しに行くよ」。「悪いわね。私が すべきでしょうけど、娘が病気なの」。「お構いなく。森はよく知ってるから、見つけますよ」。「犬とは 仲がいいんです? 息子は、あなたが犬を乱暴に扱ったと考えてるわ」。「ぬいぐるみに慣れた 町の子だな。この辺りには、可愛いプードルなんかいない」。車の盗難に比べれが、犬なんか些細なことなのに、話題はそのことばかり。脚本に違和感を覚える。ペテは、ようやく逃げ始めるが、ロゲに見つかってしまう。そして、隠れ小屋まで追跡され、「ここが 犬泥棒の家か」と踏み込まれ、「今度 逃げたら殺してやる」とレオを引きずり出される。「そんなのダメだよ!」と駆け寄るペテを、ロゲは地面に突き飛ばす(2枚目の写真)。「俺の犬だ。だから、好きなようにする。口出しするんじゃない」。ペテは、走って家に戻り、自転車で村まで追いかけて行く。ペテがGSにこっそり入って行くと、店主が「ああ、真新しい」「午前2時だな。分かった」「いやいや、見分けはつかない」と電話で誰かと話している。そこにロゲ、次いで、警官が現れる。警官:「犬は見つけたか?」。ロゲ:「他人の犬を連れての家出で懲りただろう」。「一件落着だな?」。「ああ、被害届は出さないよ」。「分かった」。「窃盗グループについて、何か情報は?」。「ない」。「シャンが いるじゃないか」。シャンとは、2人から何度も盗人呼ばわりされた東洋系の男のことだ。「もう少し待て。児童福祉局が 明日連れに来る」。「奴の家族は、どうなる?」。「妹か? 今のままだろうな」。その話を、ペテは、ドラム缶に隠れて盗み聞きしている(3枚目の写真)。
  
  
  

ペテが自転車を置いた店の前に戻ると、自転車がなくなっている。以前からインプットされた情報から、これには、あのシャンが関与しているに違いないと思ったペテは、シャン達の住んでいる場所へ直行する。しかし、自転車はそこにもない。居合わせたシャンに、「僕の自転車 見なかった? 盗まれたんだ」と訊く。いちゃもんを付けられたと思ったシャンは、「何が言いたい? ぶん殴られる前に、失せろ」とペテを突き放す(1枚目の写真)。そこに、雄牛の少女が現れ、「何してるの?」と訊く。シャン:「こいつ、俺が自転車を盗んだと」。ペテ:「そんなこと、言ってない」。少女:「ここで、何してるの?」。ペテ:「自転車を捜してる」。シャン:「携帯を盗んだとも言いやがった」。ペテ:「それは、ロゲが…」。シャン:「失せろ」。ペテの差別的発想に怒った少女は、ペテが「ねえ、待って」というのを無視して自転車で走り去ってしまう。万策尽きたペテが店に戻ると、店主がいて〔GSの店の店主とは別人〕、自転車は横の駐輪場に持っていったと教えてくれる。ペテの自転車は無事そこにあった。ロゲみたいに、難民を疑ってしまったのだ。例の少女が、目の前にいる。ペテを見て逃げる少女。ペテは「待って! 訊きたいことがあるんだ!」と全力で追いかける。しかし、砂利道に入り、カーブを曲がりそこねたペテは、ブッシュに突っ込んでしまう。心配して戻ってくる少女。「大丈夫?」と声をかける。「何とか」。「ひざから血が出てる」。「かすり傷さ」。少女に助けられ、何とか立ち上がるペテ(2枚目の写真)。「ロゲの家 知ってる? レオを持ってかれた」。「あいつの犬よ」。「奴は、ロクデナシだ」。「あんたも 同類じゃない」(3枚目の写真)。「ごめん。そんなつもりじゃ… レオのことでカリカリしてたから。ロゲが、殺しちゃうかも」「自転車のことは ごめん」「100クローネで、ロゲの家 教えてくれない?」。少女は ずっと黙ったままだ。「どうしたら、教えてくれる?」。「自転車くれるなら」。「奴が、レオを殺しても構わないの?」。「くれるの?」。「いいよ、自転車あげる」。「本気なの?」。「うん」。「そんなに犬のことが好き?」。頷くペテ。これで少女は、ペテの心が分かり、初めて笑顔を見せる。2人の心が通い合った瞬間だ。「僕、ペテだよ」。「ニーラ」。「ノルウェーに来て長いの?」。「2年半」。「それで、ノルウェー語 うまいんだ」。「兄さんも そうよ」。「兄さんは、幾つ?」。「16」。「かっこいい?」。「ええ。あんたは賛成しないと思うけど」。「どうして?」。「盗んだって、非難したから」。シャンとニーラは兄妹だったのだ。
  
  
  

キュルツのガレージに案内されたペテ。キュルツはGSの差別的な店主だ。ロゲは2階に住んでいる。レオは、ガレージの前の小屋に閉じ込められていた。もちろん鍵がかけてある。その時、車の音がする。慌てて、ガレージに忍び込む2人。ロゲ:「鳴きやまないようなら、黙らせてやる」。キュルツ:「ここには、役立たずのアホ犬じゃなく、ちゃんとした番犬が要る。ガキにやったらどうだ」。ロゲ:「他人のものをくすねるような奴にはやらん」。「そこなこと、言える立場か」。最後の言葉の意味はすぐに分かる。ロゲ:「今夜2時に引き取りに?」。午前2時とは、以前キュルツが電話で話していた時間だ。その時、ロゲはシートを外す。その下にあったのは、何と、昨夜盗まれたペテの家の車だった。車泥棒は、この2人だったのだ。キュルツ:「俺がプレートを替えるから、お前が残りを」「タバコがないぞ」。ロゲ:「お前の店と同じだな」。ロッカーを開けると、そこには盗まれたことになっている大量のタバコが隠してある。「窃盗グループの被疑者は誰だと思う?」。「どういうことだ?」。「もうすぐ 児童福祉局がガキを引き取りに来る」。2人は、すべてをシャンのせいにするつもりだ。外ではレオが吠えている。ロゲ:「まず車を済ませよう。そしたら、犬を殺す」。キュルツがプレートを取り替える。ペテは、それを2階から携帯で撮影する(1・2枚目の写真)。
  
  

外に逃げ出した2人。警察に届けても、3人がグルかもしれないので、母に話すことにして、まず、レオの救出に全力をあげる。ニーナが「待ってて」と言い、しばらくすると雄牛に乗って現れる。そして、ロープを小屋のドアに縛り付けると、雄牛に引っ張らせて、ひきちぎるように外す(1枚目の写真)。逃げる2人と2頭。車で追いかける悪党2人。ニーナは、すぐに道路から脇道に逃げ込む。それを見て、「今すぐ犬を返せ、でないと犬泥棒で訴えるぞ」とロゲが脅す。ペテは、「やれよ。車泥棒で訴えてやる。お前たちのガレージで見たからな」と言い返す。「誰も信じないぞ。車は処分するから、犬欲しさの嘘だと思われるだけだ」。「だから、写真に撮った」と携帯を見せびらかす(2枚目の写真)。慌てて車から降り、突進してくる2人。ニーナは、「写真のこと話すなんて、お利口さんね」と揶揄してから、山道から外れて森へと入って行く。キュルツは太って走れないので、追跡はロゲに任せ、「俺は戻って、車を処分してくる」と言って引き返す。一方、ペテとニーナと犬は、渓谷に架かる「鉄の箱」で谷を渡ろうとしていた。両岸に渡したワイヤーに連結された鉄の箱を、滑車で動かす装置だ。ニーナが先に渡り、次がペテとレオ。しかし、渓谷の真ん中まで来た時、ロゲが追いつき、「どうなるかは お前次第だ。携帯を 俺に投げろ」とすごむ。「嫌だ!」。「どうなっても知らんぞ」と言い、ロゲは滑車を回す。ニーナより力が強いので、鉄の箱はどんどんロゲの方に戻って行く(3枚目の写真)。そこに現れたのが、ずっとニーナの跡を付けてきた雄牛。ニーナの呼びかけに応じて、ロゲを突き落とす。ロゲから逃れた2人は、一旦はペテの家まで降りるが、母は不在、代りに警官がいる。さらに悪いことにロゲまで来る。結局、「誰も信用できない。山頂まで行って、写真を送らないと」と言い、山頂へと向かうが、時間を大幅にロスしてしまう。ここも、意図的な脚本による無理な操作が見られる。普通なら、実効性の低い母の所へ盗んだ犬を連れて行くはずがない。山頂から写真をメールで送れば済むからだ。わざわざペテの家まで降りたのは、山頂でメールを送る機会を限りなくゼロに近づけるため。というのも、ロゲがすぐに気付いて山頂へと向かったからだ。一足先に山頂に着き、メールを送るペテ(4枚目の写真)。「転送中」の表示が出た時、ロゲの姿が見える。ニーナ:「ロゲが来る。隠れないと。急いで」。岩陰に隠れる2人。「送れた?」。「分からない」。
  
  
  
  

山頂でロゲがキュルツと話している。「まだ 見つけてない。だが、問題はない。奴らも絶対ここに来る」「今 山頂だ。村に行く奴がいたら、丸見えだ」「それに、圏内になるのは、この山頂だけだ」。ロゲは一晩中、ここに居座るつもりだ。ニーナは、「山を降りないと」と提案する。「でも、見つかっちゃうよ」。「ここを降りればいいの」と眼下の絶壁を指す。「どうかしてる。こんな絶壁」。「ロープがあるわ。誰か信頼できる人に、写真を見せないと」。「そうだけど、死んじゃったら、誰も見れないよ。すぐ暗くなるから、何も見えなくなるし」。「明るくなるまで待つ。でも、あんたがいてもいなくても、あたしは降りるから」。「僕も 一緒に行くよ」。山中で一夜を過ごし、翌朝、決死の覚悟で崖を降りる2人(1枚目の写真)。スタントではないようなので、結構大変そうだ。かなり降りたところで、下から悪党2人がこちらに向かっているのが見える。慌てて、もう一度崖を登り始める2人。しかし、ペテが足を滑らせて落ちてしまう。下が見えないので、ペテが死んだかもと思い、涙を流しながら登り切るニーナ。急いで村へ向かう。レオは、回り道をしてペテのところまで駆けつける。ペテは崖下に落ちたが(2枚目の写真)、奇跡的に軽症で済んだ。そこに悪党2人がやって来る。キュルツ:「このバカ! 気でも狂ったか!? 死ぬトコだったんだぞ!」。ロゲ:「犬を黙らせろ。ここから 放り出されたいか」。ロゲは犬を捕まえ、キュルツは、ペテを引きずり立たせ、「大丈夫か? どこか折れとらんか?」と訊いた後で、「携帯を寄こせ」と怪我した腕をつかんで揺さぶる(3枚目の写真)。返事がないので、ポケットから強制的に携帯を取り上げる。そして、「いい薬になったな」と言い残して、去って行く。
  
  
  

村では、シャンが警官に拘束されている(2人の悪党もいる)。そこに、ニーナが走り寄り、「兄は、何も悪いことしてない」と訴える。さらに、「ペテが大変なの。崖から落ちちゃって、生きてるかどうか分からない」。これには警官も動かされ、「車に乗って。案内するんだ」。車に乗り込んで、救急車の出動を要請したところで、目の前に雄牛に跨ったペテが現れる。警官は、話が違うので、シャンとニーナに「何を企んでる。ここを動くな」と命じる。一方、警官もグルだと思っているペテは、強い調子で「2人を降ろせ」と命じる(1枚目の写真)。「2人を降ろせ。さもないと、雄牛をけしかけるぞ」。警官は、「そんなことをして…」と言いかけるが、雄牛が唸って向かってくるので、「分かった。落ち着いて」と態度を和らげ、2人を車から出す。ペテ:「じゃあ、あいつらを逮捕して」。警官:「何を言ってる?」。「あいつらが、車を盗んだ犯人だ」。ロゲ:「あの子は、頭が変なんだ」。ニーナ:「ホントよ」。キュルツ:「たわごとに決まっとるだろ。自分の兄貴を助けたいだけさ」。警官:「証拠でもあるのか?」。ペテ:「携帯で、あいつらと車の写真を撮った」。ロゲ:「なら、機会をやろうじゃないか。警察に写真を見せてみろ」。ペテ:「もう 持ってない。あいつらが取り上げた」(2枚目の写真)。ロゲ:「嘘っぱちだ」。ペテが嘘をついているとみなした警官は、急に厳しくなる。「誰かが怪我する前に、雄牛をどけるんだ。命令だぞ!」。ニーナ:「無駄よ、ペテ。勝てないわ。あたし、シャンと一緒に行く」。「フェアじゃない」。「他に 途はないの」。そこに車が猛然と走ってきて父が降りる。「こんなトコで何してる?」。警官:「その子が、一線を越えたんです。雄牛で我々を脅し、キュルツとロゲを泥棒だと主張した」。父:「その通りですよ。2人は車泥棒です」。ペテ:「メール受け取ったの?」。父:「写真付きでな」「車がポンコツだったので、これ以上早く走れなくて(Jeg hadde kommet før lengst, hvis det ikke var for det vraket.)」(3・4枚目の写真)。「この写真、ご覧になりたいでしょ?」。これで2人の悪党はお陀仏となった。問題は、解説にも書いたポンコツ問題。車は、恐らく1978-82年に販売されたターセルの欧州仕様車。エンブレムに「TOYOTA」の文字がはっきりと見える。2005年公開の映画で25年も前の車を使うとは! そういう意味では、ポンコツかもしれないが、ペテの家族の車はボルボなのにわざわざエンブレムを替えている。それなのにトヨタの文字は丸見え。これは日本車を意図的に貶める悪意があるとしか思えない。
  
  
  
  

最後が批判では、ペテとニーナが可哀想なので、最後に、幸せそうな2人のツーショットを1枚。2人と犬のレオ、雄牛のサムソンは、これからもずっと友だちでいることだろう。
  

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